「境」ULOGハロウィン

ULOGハロウィン
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どもどもセーバーです。
ULOGハロウィンなのでホラー小説書きました。
そこまでホラーではありませんが、楽しんでいただけたら幸いです。

題名「境」



それは4月の肌寒い、桜の花が咲いたと報道された日だった。


黛弘樹は見えてはならないと言われるものが、見えてしまう人間であった。
現代という科学が確立された世界で、怪異などという言ってしまえば馬鹿らしいようなものが見えてしまうのだ。
なぜ彼が見えるようになったのか…キッカケなど些細なことでしかなかった。
言うなれば、どこかの漫画の主人公のように途端に見えてしまったりだとか、そういう類であった。
ただ見えていたチャンネルが変わっただけ。
そう…まるでテレビの番組を買えるように彼の見えていた世界は、途端に彼の瞳に怪異というおぞましいものを映し始めた。



「せんせぇ〜トイレ〜」

「先生はトイレじゃありません」

「はぁい」


ガラリと椅子を引く、木と木が擦れあった音が前からした。
遠くなった足音に耳を傾けながら、白い文字で埋め尽くされた黒板に目を向ける。
隣にいる一つ目のバケモノなんて知らないかのように。


「(気づかれたら…)」

アガアッッアアミエテルヨネェ…ミエテルンデショォ……

「(知らないったら…)」

隣から骨が折れるような音がする。
折れたであろう灰色の骨が視界の隅に映る。
黒い皮膚から飛び出した骨が、隙間を作り中の赤黒い肉を見せてくる。
ぼたぼたと赤い血が垂れて、床に血溜まりを作っていた。
一つしかない血走った目玉はギョロギョロと動いている。


「(何で…)」


何で、俺は見えるんだろう。
そう疑問を抱えながら机の上の文房具を片付けた。





「なぁ…アイツ見てないか?トイレに行ったきり帰ったこないんだよ」

「…俺は知らないけど…」

「そっか…じゃ、またな!」

「……ん」



どうやらトイレに行った前の席の奴が帰ってこないらしい。
俺には関係のないことだ。
カバンを持って教室を出た。





「やぁ少年」

俺の肩に手が置かれた。
何だ?
そう思い後ろを振り向いた。

廊下の蛍光灯がチカチカと光っていた。

「…?」

「あはは。まるでなぜ私がここに居るのか…そしてお前は誰だと言う表情をしているね」

「俺に用でも?」

話しかけてきた黒髪のハーフアップ女にそう問いかける。
というか何で中等部の生徒が小等部の校舎にいるんだ。

「用事…そうだね。私はキミの用があって来たのだよ。
……怪異が見える、小等部5年の黛弘樹くん?」

「!?………なんでっ!?」

「フフフ。なぜその事実を知っているのかと、思っているようだね?」

ハーフアップ女は口角を上げて高らかに笑った。
何でコイツが俺の秘密を知っているんだ?
というかコイツは誰だ…?


「キミの思っていることに答えるとするならば、どうだ?私について来い」


ハーフアップ女はまた笑いながら俺の隣を通り過ぎていった。
コツコツとヒールのついた黒い上履きを鳴らしながら歩いている。
左腕には中等部の生徒の為の通学カバン。
拳を作ったままの右手。


今日は訳が分からないことが多く起きる、厄災日らしい。
俺は急いで女の後をついていった。



まさか、この女についていったこの瞬間から俺の未来は決まっていただなんて、思いもしなかった訳だが。






「あはっ…キミは賢いね。とっても」

「何がです?というか本当に貴方は何者なんだ?」

女は振り返りながら白い病的な色をした唇で言葉を紡いだ。

「何者…?ふふん。まだまだ小学生だから理解できんか」

「貴方だって一年前までは小学生だっただろ?」

女は目を見開いて少々高揚した表情を浮かべて、俺を見つめる。

「何でそう思う?少年」

俺は俺が見て分かるだけの情報を話した。

女の着ている服は白いセーラー服。
青色のリボン。
黒いヒール付きの上履き。

これらが意味するのは、俺の所属する私立学園「辻咲学園」中等部の女性制服と一致するからだ。

私立辻咲学園とは小・中・高・大の有名私立の一貫校だ。
在籍する生徒は多岐にわたる。
勉学が良い生徒、運動能力が極めて高い生徒、リーダー性やカリスマ性を持つ生徒…などなど。
未来を作る能力のある生徒たち…所謂エリート生徒が在籍しているのがこの学園なのだ。
そんなエリート学園の中等部で、「黒いヒール付きの上履き」を履くことができるのは、「部長クラス」の生徒のみ。そして青色のリボンは今の中学一年の学年カラー。

「よって貴方は中学一年にして部長クラスになった…夢畑優子!」

「実に素晴らしい推理だった」

女はパチパチと拍手をしながらこちらへ向かってくる。
手を伸ばし人差し指を俺の唇に当てた。

「でも…残念不正解。私は中等部の一年だけど、夢畑なんて言うダッサイ名前では無い」

「じゃぁもう検討つかないんだけど…」

「そうこうしているうちに…目的地にたどり着いたようだね」

目的地?ここが?
そう思い女が視線を向ける場所へ目を向ける。
そこは男子トイレだった。

「…っ」

しかしただの男子トイレでは無い。
明らかに見える黒く仄暗い空気に包まれた空間。
見えるのは歪む景色と赤色の空だ。後ろの廊下の窓の外は青色の空。
それが一体何を表しているのかはもう分かってしまった。


「さぁて…助けに行きますか」

「まさか…この中に入るのわけ?」

「入らないと彼、死ぬよ?良いの」

「彼って誰だよ?」

「あれぇ、もう分かってるかなって思ったんだけど…」


女が目をギョロリと回して、また唇を開いた。


「キミの前の席の子さ」

「!」


クラスメイトが必死に探していたが、別に他のクラスに話している訳じゃないだろう。
なぜ今、この場所に居ない人間がここに居ると言える?
なぜ…そいつが俺の「前の席」だという事を知っている?

茜色の光に照らされた不思議な黒髪が、ふわりと宙を舞う。
中学生らしくない顔立ちで、女は笑った。
俺を写す瞳は宝石の、ペリドットの様に光っていた。


「さぁて…ここ、かな?」

そして女は戸惑いなく男子トイレに入っていった。

「待て待て待て」

「何だい少年」

「躊躇もなく男子トイレに入るアホがいるか!?」

「え?気にしないし平気だよ〜」

「誰かに見られたらどうするんだ…」

「その時はその時〜」

なんだこの女…
俺は自身のブレザーを女の肩に放り投げた。

「もっと隠そうとしろ、バカ」

「そのセリフはキミのような小さい紳士には似合わない。か弱い乙女に扮する少年になってから出直してくる事だ。」

「(コイツ…俺の優しさをこうも…!!!!!)」

「まぁありがとう。その気遣いは感謝するよ」

女は俺のブレザーを片手で掴みながらツカツカと奥に進んでいった。



「お、あった。三番目」

「このトイレは確かに三番目だけど?」

「まぁまぁ見てなって」

女は三番目の扉へ手を伸ばすと、3回ノックをし始めた。

「帰りませ」

コン

「帰りませ」

コン

「お天道様が見ております」

コンッ

その途端、トイレのタイルが剥がれ始め宙に浮かんだ。
とてつもないナニカの力が俺の体を浮かした。

「ちょっ…!?」

「落ち着きたまえ少年」




「すぐに、来る」






ドガアアァァァアアァァンッ!!!!!!!!!!







とてつもない大きい音と、ビリビリと磁場が揺れる電気の揺れが起こった。
浮いた体が一回転二回転と宙をクルクル回る。
しかし女は直立不動のままだった。

何色と言って良いか分からないほどのドス黒い触手が数本、扉の隙間から出てくる。
見ただけで体全身が恐怖を感じ、震えが止まらなくなった。
逃げたいが体を動かそうとしても、目の前の圧倒的な恐怖のせいで動けなかった。
それれでも女は直立不動のままにこやかに笑っていた。


「みーつけたっ…!!!!!」


ペリドットの瞳が光を散らし、闇をも散らしながら触手の一本を掴んだ。
白色のセーラー服が見たことない風でバサバサと大きく揺れた。
ずっと拳のままだった右手を開き、黒いハコのような正三角形の物を触手へ思いっきり叩きつけた。


そうして一瞬にして触手も、この居心地悪すぎる空間も全てが消えた。



「い゙っ………って…ここは」


目の前に前の席の奴が座っていた。


「!?」

「私が何者かわかったかな?」


目の前の女…いや別称「悪魔」と呼ばれている彼女は俺の目を見て、問いた。


怪異を見れて、なおかつ祓える人間。
部長クラスの黒い上履き。
三つ編みで構成されたハーフアップの黒髪。
宝石のように光るペリドットの瞳。
誰もが見ても振り返るだろう、この美少女。


「怪異部の唯一の部員」

「そう…私こそが……」


怪異部部長であり中等部一年の緒方千夏だ。




「さて…キミこと黛君には悩み事があるようだね。なぜ自分がこの世界を見えるようになってしまったのか、かな?」

「…さぁ分からない。」

「そうか…なら怪異部に入らないか?」

「え?」

何を口走っているんだこの女は。
たかが小等部の小僧の俺に、部活勧誘?

「依頼が思いつかないなら、私の元で探せば良い。時間は有限なんていうが…まだまだ私達は子供だ。少し、寄り道してみないか?このおかしな世界を」

「その案に乗って俺のなんのメリットがある?」

「そうだな…副部長クラスとか」

「……」

「それと、普通では見てない景色も見せてあげよう。妖の世界は綺麗だ。こんな薄汚れた現世なんかよりは、ずっと。」

「まぁ…」

「うん?」

「寄り道してみるのは…悪くないかも」

「じゃぁ決定だね」


ようこそ!怪異部へ!






「あのぉ…僕は一体今まで何を…」

「「あ」」

忘れてた2人であった。




設定

主人公
黛 弘樹(まゆずみ ひろき)



私立辻咲学園小等部の小学5年生の見えるようになってしまった男の子。
体重身長は平均並だが頭の回転はそれなりに早い。
運動が得意で兄が野球部のキャッチャーをしている。
女子中学生の部下になってしまう。
綺麗な顔立ちをしていて、過去に誘拐された経験がある。
怪異を怖いモノとして捉えている。


ヒロイン?ヒーロー?枠
緒方 千夏(おがた ちなつ)



中学一年生の美少女。自称「怪異に育てられた少女」
不思議ちゃんでオカルトが好き。「知っている」ことが多い少女。

ペリドット色の目を持つ美少女だが、中身は超がつくほどの変人で、大人が手に負えないほどの身体能力と頭脳を持っている。
所属部活は「怪異部」の部長。
なんかほぼ心霊探偵的な感じになってる。怪異を味方だと思ってる。

別称「悪魔」命名は教師一同
理由……よく授業中に抜け出して追いかけようとするが、全部逃げられるし、知らない間に関係の無い書類が回ってくる為。

(メーカー様の所に目の緑が無かったので赤にさせてもらってます。)




私立辻咲学園
エリートな子供達が集まる小中高大一貫の私立学園。

部長クラス
エリートな子たちが集まるので、そんな生徒を部長として纏められるのは限られた優秀な生徒のみ。
よって部長は他の生徒とは違う扱いになっている。格上の存在。
変人と硬い頭のやつしか居ない。あとはプライドエベレストがチラホラ。
生徒会は別でエリートな生徒が集まっている。生徒会と対立しがち。

副部長クラス
部長クラスよりは下だが、普通の生徒よりは上の存在。
内申点とか上がりやすいポジ。

怪異部
「迅速に解決いたします」がキャッチコピーな怪異解決部。
通称怪異部。
部長こと千夏が作った部活で、主な活動内容は「怪異問題の解決」
かなりの頻度で問題を解決してる。




あとがき
本当はもっとイベントあったんだよ…ろくろ首事件とか埃を被った千羽鶴事件とか…
過去もわざわざ作って…アイテムとか伏線とかいろいろやったのに…
時間が無さすぎて書けませんでした。はい。
ハロウィンなので取り敢えずホラー作れば良いかなとか思ってやった。
常識人と変人コンビが書きたかっただけ。
そこまでホラーじゃなくて草←
後悔も反省もしてない←

もし続きを書くならろくろ首事件かな…
多分題名は「黒百合に咲く噂」

イメージ画をのせておきます。



皆さんハッピーハロウィン

caviarbloom0l


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あれ、千夏ちゃんの目ってペリドットじゃないの?赤い目なの???

しょぅゆ。
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詰め込みすぎて何が何だかもう…()
ただの書き間違いです…すんません…


caviarbloom0l
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caviarbloom0l 5 7

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caviarbloom0l 4 11

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