ユキモモ初納

ユキモモ 初納 カタツムリ
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「ねぇモモ、僕のどこか好き?」

「え」

お気に入りのワインをものすごく絵になる格好で飲みながら、
ユキは唐突にそんなことを聞いてきて、

オレは危うく落としそうになったグラスを
慌ててテーブルに置いた。

じっとユキの顔をみて、ワイングラス、ボトルをみて、
またユキの顔を見る。

ボトルはもうほとんど空だった。

「ユキ、酔ってる?」

「酔ってない酔ってない、」

ひらひら手を振って言うから、
グラスが傾いて中身が零れそうになっている。

嘘だな、これはそれなりに酔ってる時の仕草だ。

「____それで、ユキの好きなとこ?」

「そう、モモは僕のどこが好きなの?」

胸の中の奥の方が、ざわざわと蠢いた気がした。

まるで恋人同士の会話だな、
とどこか他人事のようにそう思う。

一応言っておくけど、俺らは付き合ってない。

当たり前だ、だって俺らはどっちも男だもん。

優しいユキさんは男だって付き合ってくれそうだけど
そのときは俺が全力で拒否するだろう。

実際にそんなことになって拒めるのかは微妙だけど、
というかそもそも、そんなことになるわけないんだから。

「モモ?聞いてる?」

「え、あ、聞いてる聞いてる!
ユキの好きなことだっけ!

何個いえばいい?モモちゃんいくらでもいえますぞ!」

ユキの好きなところなんて上げだしたらキリがない。

むしろ嫌いなところあげる方が難しいんじゃない?
ってレベル。

もし好きなところが一つ一つ形を持つなら、
エベレストくらいは作れるはずだ。

それくらい、俺はユキが大好きだから。

ほらまた、胸の奥がざわつく。

「そうだなー!まず顔!俺好みのとびきり綺麗なイケメンフェイスだよね!」

「モモは僕のこと顔で選んだの?ひどいな」

「まずって言ったじゃん!
というか、ユキがその顔にうまれたから仕方ないよね!」

「僕のせいかい。」

あ、ツボに入った。

白目剥いて肩を震わせるのは、
ツボに入った時のユキの笑い方だ。

それ以外の時は口の端だけ上げて笑う。

といっても、ユキって笑いのツボって広くて浅いから、
すぐツボに入るんだけどね。1日に何度も見る笑い方だ。

「ユキのその笑い方も好きだよ。
でも激レアの微笑みも最高にイケメンだよね。」

やっと肩が震えなくなったユキに、続けてそう告げる。

「ん?こう?」

ユキが俺の言う激レアの微笑みを再現しようと
百面相して、今度は俺が肩を震わせる番だ。

俺が笑っているのに気付くと、
キリッとキメ顔をかましてきてもうダメだった。

「ちょ、ゆき!そのイケメン顔で遊ばないで!!」

面白さとかっこよさのダブルパンチでひいひい言いながらユキにもうやめて!と懇願して、ようやくやめてもらえた。

にらめっこ大会だったら優勝よこれは。
イケメンはにらめっこまで強いのか。ずるいな。

「他には?続けてよ、」

「ユキってたまに強引だよね、そんなとこも好きだけど」

「知ってる」

その自信に溢れたとこも好きだよ。

好きなところなんて、本当に息をするように言えてしまう。

「ユキは目も綺麗だよね。サラサラの髪の毛も好き、今度お手入れさせて」

「うん。いいけど、それ面白いの?」

「すごい面白い!乾かしたらポニテとかして遊ぶ」

「僕、遊ばれるのか」

「ダーリンはツインテールもいけそうだよね!」

「くくっ···流石にキツくない?」

ほら、この笑い方だ。

くつくつと喉を鳴らして笑う。

白目を剥くんじゃなくて、目を細めて、
眉がちょっと下がった、激レアの微笑み。

「あとはー、その最高にクールな声が好き!
演技派なのもめちゃくちゃ推せるよね!」

「モモはあんまり演技はしないよね、」

「相方にこんな演技派持っちゃったら軽率にやれないって!
その分バラエティは頑張るからね!」

「充分頑張ってるでしょう。
みんなモモのこと褒めるから、僕も嬉しい。」

本当に嬉しそうにそう言われるから、
俺はどうしていいか分からなくなる。

褒められ慣れてないって言うのかな、
ユキやRe:valeを評価されるのは嬉しいけど、

それが自分の方に向くと途端に逃げたくなってしまう。

キョロキョロ視線を彷徨わせて、あ、とかう、とかしか言えなくなる。

そんな俺を、ユキはおかしそうに見ていた。

「モモはもっと色んな人に評価されているのを認めればいいのに。」

「だ、だって···ユキが褒められるのは嬉しいんだけど···」

「僕だってモモが褒められるのは嬉しいよ?」

「でも、なんかこう、褒められるとどうしていいかわかんなくなるんだよ。」

「自信もってそうでしょ?って返せばいいじゃない。
僕がいつもやってるでしょう」

「あれが許されるのはイケメンだけだから!」

ユキはだいたい見た目を最初に、
次に歌を褒められることが多い。

イケメンだとかかっこいいだとか言われて、
知ってる、とか返して許されるのは

ユキがほんとにイケメンだからだ。

あれと同じようなことを俺がやったら
全国から、いや、全世界から苦情が入るよね。

「俺の話はとりあえず終わり!!
ユキの好きなことまだ言う?」

「うん、続けて。」

当然のように即答されたから、
俺はあとはねー、と続ける。

「料理上手なところもいいよねー!
ユキの将来のお嫁さんが羨ましい!」

胸の奥が、チクリといたんだ。

「僕が料理したいと思うのはモモにだけだよ。」

「またまたー!ユキってばジェントルなんだから!」

ユキの甘い言葉は、とびきり美味しい餌だ。

ユキが言葉を続けても、
イマイチ頭に入らなくてくやしい。

ユキの言葉は一言一句逃さず聞いておきたいのに。


いつからか、俺の胸の奥に巣食うナニかがいた。

そいつはいつでも口を開けていて、
今みたいにユキが甘い餌をくれるのを待っている。

その代わり、俺がその餌を受け取らないように話を逸らしたりすると、クチバシでつついて胸を痛ませる。

そのナニかの名前は、恋だった。

「ぼくは、」

「ん?」

「モモのそういう明るさが好きだよ」

「ん?んん!?!?!?」

いまなんていった。

ものすごい爆弾を落とされた気がして、
文字通り思いきり飛び上がった。

ガタッと机に腕が当たってグラスが揺れるから、
あわてて押さえて座り直す。

「え、ユキ大丈夫?眠い?もう寝る?酔ってる?」

「よってないし寝ぼけてないから。ちゃんと聞いて。」

「あ、はい、」

結構ガチなトーンで怒られて、
あえなく俺は大人しくなる。

え、いやまってなんで俺怒られてんの?

「僕はモモの真剣さが好きだよ。」

「え」

「自分のことより僕のことを優先するのも、
すこし心配になるけど嬉しくて好きだ。

笑うと見える八重歯も、可愛くて好き」

俺はもう、何も言わない。
と言うより、色々予想外すぎて何も言えない。

「僕はインドア派だけど、
スポーツしてるモモはかっこよくて好きだなって思う。

後輩の前で頼れる先輩をしてるモモのことも好き。」

「え、え、まって、」

「待たない。僕は、モモのことも、百瀬のことも、
全部ひっくるめて好きだ。

likeじゃなくて、Loveの好き。」

静止の声すら一刀両断だ。

珍しくって言っちゃ悪いけど、
珍しくユキがたくさん話した。

愛の言葉を囁いた。

胸の奥で、恋が暴れてすごく苦しい。

「な、なんで、···そんな、告白、みたいな···」

せいいっぱい絞り出した声は、
みっともなく震えていた。

「モモ、おいで」

両手を広げて構えたユキ。

俺はどうしていいかわからなくて、
いっそ叫び出したい。

無理なら家中を暴れ回ってもいい。

とにかく、このどうしようもない衝動を
どうにかどこかにやりたかった。

「モーモ、」

とびきり優しくて、大好きな声。

優しく微笑むユキには、
どうしても勝てなかった。

おずおず自分が座っていたソファーを降りて、
ユキの前まで歩いていく。

これは、どうしたらいいんだろう、
膝に乗れってことなのか。

「ユキ、おれ重いよ、?」

「いいよ、おいで」

即答されたら、もう反論出来ない。

失礼します、と小声でことわって、
恐る恐る膝立ちでソファーに乗り上げる。

それから腰を下ろしたら、
ユキがすかさず背中に手を回してきた。

あ、これやばい、ユキの匂いする。

その大好きな、ふんわり甘くて優しい香りは、
俺の涙腺を刺激した。

「ねぇ、モモ、」

「な、なに?」

できたらもう喋らないでほしい。泣きそうだ。

だけど、それを伝えられるほど言葉は出ない。

「好き」

囁かれて、ついに涙はこぼれてしまった。

見られたくなくて、ユキの肩口に顔を埋める。

ごめんユキ、服濡らしちゃってごめん、
でもこれ、俺悪くないと思うんだよ。

きっと気付いているのに、
気付かないフリをしてユキが頭をポンポンする。

「ねぇ、モモは?僕のこと好きじゃない?」

ほんの数十分前の俺に教えてあげたい。

ユキさんに迫られるとか、そんなことあったよ。

「モーモ、」

子供をあやすみたいな声で言われて、
おれは本格的に涙が止まらなくなってまずい。

「ゆ、ゆき、ばかぁ···」

ぐずぐず鼻を鳴らして泣く俺はすごくみっともない。
成人過ぎの男が何やってるんだって思う。

思うけど、涙は止まる様子がない。

「おれ、ずっと、···がまん、ぅ、···も、ばかぁ」

「うん、ごめんね、」

全然そんなこと思ってない声で、
嬉しそうにユキが言う。

言いたいことも言わなきゃいけないこともいっぱいあるのに、
どれも上手く言葉にならない。

ずっと閉じ込めてた恋が、
自由になれる喜びで騒ぎ続けて、いっそ痛い。

何も言えなくなる俺を、ユキはたぶん、
微笑んで待ってる。

顔は見えないけど、空気が揺れたから、多分間違いない。

俺はこんなにユキのことが大好きなんだ。

見なくても何してるか分かるくらいには、
ずっと見つめ続けてきた、だいすきなひと。

「ほらモモ、教えて、モモは僕のこと、どう思ってるの?」

こうなったら、もう、仕方ないと思う。

決意を固めて、深く息を吸いこんだ。

俺の恋が自由なるまで、あと5秒。

カタツムリ


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